守備番号4番。その場所を守る選手を、我々はセカンドベースマンと呼ぶ。
これは燕のセカンド山田哲人と愉快な仲間たちの戦いの記録だ。
これは試練か、それともいつも通りか
『Bクラス』
懐かしい響きである。
実家のような安心感。羊水の中のような安堵感。
チーム編成に不安を抱えながらも、開幕3連戦を完璧に滑り出したスワローズだったが、あれよあれよと負けが込み、いつの間にか山田が不在。
試合に出ている選手らも成績は振るわず、軒並み打率は1割台。
いやはや、困った困った。
特に不調と騒ぎ立てられているのが、4番村上宗隆であるわけで。巷では、好調のオスナと打順を入れ替えるべきだと言われているとかいないとか。
しかし、その必要は全くない。
野球はヒットを打つスポーツではなく、点を取るゲームだからだ。
4月、人が居ない中で高津監督が生み出した苦し紛れ打線はこうだ。
濱田 | 中 |
武岡 | 二 |
サンタナ | 右 |
村上 | 三 |
オスナ | 一 |
青木 | 左 |
中村 | 捕 |
長岡 | 遊 |
投手 | 投 |
ここに代打川端、代走並木を携えての戦いだ。
山田は調子を上げつつあったが、足のコンディション不良で離脱し、その後は出たり出なかったり。
そういう意味では武岡には大きなチャンスが巡ってきているわけで、ぜひ何かしらの爪痕を残してもらいたい。
で、この打順で村上を下げろという話だが、比較的ナンセンスである。
四球があり、得点圏に強い村上
見出しの通りである。
打率こそ1割前半に到達した村上だったが、要所での四球は選べていて、不調の中で得点圏打率は3割を超えていた。
その後ろに続く打者は軒並み低打率。
つまりここでオスナと村上を入れ替えようものなら、今度は四球で塁に出る村上を、ホームに帰す手段がなくなるわけだ。
3番までの誰かが塁に出ていれば、村上の四球で二塁に走者を送れる。仮に村上一人だとしても、オスナの長打で村上が三塁に到達することも十分考えられるわけで、結局村上と「心中」する気がなくとも、村上は上位に(もっと言えば、調子のよい打者の前に)置いておくことに十分価値があった。
並木の存在も大きい。
盗塁を狙いたいとき、一打でランナーを少しでも先へ進めたいとき、並木を投入することで、それが可能になる。
ヤクルトの外野は青木、濱田、サンタナと、お世辞にも堅いとは言えなかったわけで、その部分に守備範囲の広い並木をあてがうことができるというのも、親和性が高い。
並木自身も自らに求められたプレーをよく理解していて、盗塁、単打での先の塁への走塁、不意を突いてのセーフティバントなど、多彩なプレーで敵を惑わす。
一軍経験が浅い分なのか、精彩を欠く部分も見られるが、チームの中で自分がどんな役割を求められているかをよく理解した、素晴らしいプレーだと思う。
特に我が軍には代打の切り札川端慎吾がいるため、川端が塁に出る重要な局面で、代走に使える切り札がいることは非常にありがたいことだ。(これは巨人の第二次原政権時によく見た、代打大道・谷・高橋由伸に代走鈴木尚広が出てくる図によく似ている)
真価が問われる5月の戦い
昨年の開幕も、ヤクルトは大負け越しで始まった。
結局我が軍は、どこまでも春先に弱いのである。
もしかしたらこのままずるずる低空飛行をしていくのかもしれないが、またそれも一興。
『スワローズは、弱いチーム』
その弱いチームが、ここ2年、あれだけ立派に戦った。その事実が、我々を大いに感動させた。そのことだけは、決して忘れてはいけないことだ。
強いチームを応援したいのなら、巨人やホークスを応援していればいい。
「読売倒せ」なんて声を出す必要はない。レフトスタンドに行けば、『強いチーム』の応援ができるんだから、行けばいい。
ここ数年で調子に乗って、スワローズを強いチームだと勘違いしている人がいるならば、考えを改めるか、船を降りてもらうしかないわけだ。
とはいえ、負け続けるのはうれしいことではないし、2017年のような思いはもうしたくない。
一つ誓って言えるのは、私は全試合の勝利を信じて疑っていない。
10点差をひっくり返したあの伝説の試合は、悪夢の2017年に起きた出来事だからだ。
どんなに弱くても、スワローズはきっと勝つ。
阪神は必ず夏にブレーキがかかるし、横浜とて不安要素がないわけではない。
対して我が軍は、この5月から塩見が帰ってくることによって、攻守共に地力の向上が見込まれる。
山田が試合に出られるかということが気がかりではあるが、まだまだ喜怒哀楽を表現するには早すぎるということだけは確かだ。
ちなみに今期は、神宮球場で行われる全試合を観戦してみようと思っている。
それくらい真剣に試合を見なければ、外野で騒ぐ権利すらないのだろうから。