ごきげんよう。ないたーです。
説明しよう。
ウイトラコチェとは、黒穂病に感染したトウモロコシに形成される肥大組織のことで、メキシコでは伝統的に食される特産品、「メキシコのトリュフ」とも呼ばれる食材である。
黒穂病は、日本やアメリカではトウモロコシに発生する病害として知られ、有効な殺菌剤などもなく、抵抗性品種の栽培や他の作物との輪作体系を築いて防除するものである。
一方メキシコでは缶詰にされたり、トルティーヤにチーズを挟んだ料理”ケサディーヤ”のソースとしても用いられる。
なんでもアステカ時代に端を発するという、紛うことなき伝統食材なのである。
その姿はこちら。ご照覧あれ。

ウイトラコチェとの出会い
いやはや、我々日本人には到底食材としては受け入れられない外見をしています。
なんでこんなものが我が家のキッチンに鎮座しているのか。
答えは単純明快。
ある日、野良のおじさんが、労働しているないたーくんに声をかけてきたからです。
おじさん
「うちのトウモロコシに黒穂病が出たんだけど、こうなっても食えるからこれあげるよ。
まあ俺は食ったこと無いけど。」
ないたー
「????????????????????????????????????????????」

おじさん
「ほら、もういっこあった」

ないたー
「????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????」

自分の記事でGIFで遊べて満足しました。
なにひとつ腑に落ちていませんが、食べ物は天からの恵み。
”天”の姿が例えおじさんだったとしても、有り難いことに変わりはないのです。
ということで、この得体のしれない病体を調理していきましょう。
キッチンにただ立ち尽くす
しかし持って帰ってきたのはいいものの、このときの僕には調理方法はおろか、こいつがなんなのかもわかりません。
畑にあった時は真っ白い物体だったのに、持って帰ってくるまでの間に表面が破れて黒い粉が噴出しています。
怖い。
ヒントは「トウモロコシ 黒穂病」なのですが…

サジェストされてる。
そうか、マジで食えるのか。天の姿をしたおじさんは嘘をついていなかった。
こいつがメキシコで「ウイトラコチェ」と呼ばれて重宝されていることがわかりました。
しかも、日本で秋の味覚として知られる「マコモダケ」も、黒穂病に感染したマコモの茎が肥大化したものだということがわかりました。下記サイトを紹介しておきます。 https://www.kinokkusu.co.jp/etc/09zatugaku/himitu/himitu01-6.html
ふむふむ、少しだけ抵抗感が減ったぞ。
ウイトラコチェは、日本人でもちらほら食べてブログに紹介している方がいるようですが、どの方も恐る恐る食べている様子です。
調理方法も探り探りな様子。それはそう。僕もそうです。
そのような中で、メキシコ大使館公式twitterが紹介していたサイトがありました。
メキシコではマジでポピュラーな食べ物らしく、しかも高値で取引されているらしい。
タダでもらいましたよ、僕。ラッキー。
このほかにも、現地での食べ方をいくつか紹介してくださっています。
ぐぬぬ。パヌーチョスもソペもそう簡単には作れそうにない。
「Huitlacoche」で検索すると、外国語のサイトのほうがヒット数が多いのですが(当然)、どうも外国人のみなさんも「なんこれ??」みたいな記事を立てている様子でした。
きっとメキシコ人以外の人なのでしょう。
うーん、わざわざ外国語のサイトを漁ってまで美味しい食べ方を調べるほど気力はない。
しかたない、炒めるしかないか。
しかたない、炒めるしかないか。
ということで炒めていきます。
下処理の方法すらわからないのですが、しかし我々が食べるにはあまりにも粉とか虫がついている。

そこで、まずはトウモロコシからウイトラコチェをもいで、

お水。

軽くゆすぎます。

ゆすいでから、トウモロコシのひげとかを軽く取り除きました。
ちなみにウイトラコチェが浸っていたお水はかなり黒みがかかっていました。
そしたらフライパンに、

オリーブオイルを引いて、

えい。

フライパンも、まさか自分がウイトラコチェを炒める日が来るとは思っていなかったでしょう。
安心したまえ、僕も同じ気持ちだ。
どれだけ炒めたらいいのかわからない。
生は怖い。
少しでもこいつを美味しく食べたい。
その一心で、もう少し手間を加えてみます。
荒く刻んだ玉ねぎと

スライスしたにんにくと、ひき肉を加えて

塩こしょうを振って完成とします。

はたしてこれで完成したと言えるのか。
実 食
ここがYouTubeなら、間違いなく筆文字と和太鼓の音で表示されていたことでしょう。
食べます。炒めウイトラコチェ。

…。
……。
これを言葉で表現するのにはあまりにも語彙力がない。
結論から言うと、無味に近い。美味しくないことはない。全然食べられる代物ではある。
見た目のインパクトに対して、すごく奥ゆかしい味わい。
もちろん全くの無味ではなく、なにかの、というかウイトラコチェの風味を感じはするのですが、「ほう、これがウイトラコチェの味ですか」と思うほど味はない。炒めすぎたのかな?
中にはちょっとしっかり目に味がある欠片もあったのですが、きのことかトリュフかと言われればまあそうかもしれない。
でも食べ慣れているきのこに近い味ではない。マジで形容できない。
味よりは風味を楽しむものという点ではトリュフ的な立ち位置なのかもしれないですが、そこまで香りが強いかと言われるとそうでもない。と思ってしまう。
でも、間違いなくウイトラコチェの味わいはある。
食感は、芋っぽい柔らかさをちょっと感じつつも、ザラッとしているというか、サクッとしているというか。
炊いた百合根って、ねっとりした中にちょっとザラつきがあるじゃないですか。そのザラつきっぽいものを感じなくもない。
サクッとというのは、砂肝を食べたときに近いタイプのサクッと感。砂肝みたいに硬さはないけど、ちょっと抵抗はあるけど歯はすんなり通る感じ。スナック菓子とかそういうのではなく。
断面を見てみると、粒状に見える黒い物体が跳梁跋扈していたので、ザラつきとか砂肝的サクッと感というのはあながち間違っていないようにも思います。

メキシコ人が食べてるんだから安心してほしいのですが、こいつは無毒です。
先に紹介した「マコモダケ」も美味しく食べらてるわけですし、古の日本では黒穂病で黒くなった部分を抽出してお歯黒の原料とかにしてたらしいので。
つまり口にもお腹にも入れても大丈夫ってことです。
冒頭の説明で、トルティーヤにチーズを挟んだ料理”ケサディーヤ”のソースとしても用いられると述べました。
そこで、これに乗っけて食べてみましょう。

「ラ・ピッツァ 発酵&低温長時間熟成生地 自家製の生地玉から作りました ふっくらもっちり厚生地の4種クアトロチーズ トッピングのチーズにはナチュラルチーズ100%使用」
早速ピザをチンして

乗せる。

別に美味い。
そりゃあ、チーズのピザに炒めたひき肉と玉ねぎが乗ってたら美味い。
ウイトラコチェの風味も食感も美味い。
いや、美味いんかい。

ごちそうさまでした
以上、未知の食材、ウイトラコチェとの邂逅と喫食でした。
僕がサラリとインターネットを見た限りでは、炒めて食べた人はいらっしゃいますが、それをピザに乗せて食べた人はいなさそうなので、日本のウイトラコチェ界隈に新たな1ページを刻むことができたのではないでしょうか。
ウイトラコチェ、多分炒めても茹でても、現地に倣ってペーストとかソースにしても美味しく食べられるものなんだと思うですよ。
でも、トウモロコシが欲しくて栽培している日本とかアメリカではやっぱり収量を下げる病害なんだろうし、それをわざわざ発生させて収穫して売るには手間もかかるし知名度は無いしでいろいろと難しいんでしょうね。
絶対トウモロコシ作ったほうがいいもんな。
メキシコよりも、日本での扱いのほうがよほど珍味なのではないかと、そう思ったのでありました。
余談ですが、ウイトラコチェ乗せピザを食べた後に親子丼を食べたところ、めちゃくちゃ美味かったです。

みなさんも野良のおじさんを見つけて、黒穂病が発生したトウモロコシをもらってみてはいかがでしょうか。
ちなみにウイトラコチェを食べた次の日、なぜかめちゃくちゃ寝坊しましたのでみなさんもお気をつけください。
ではまた。
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