守備番号4番。その場所を守る選手を、我々はセカンドベースマンと呼ぶ。
これは燕のセカンド山田哲人と愉快な仲間たちの戦いの記録だ。
ありがとう、村上さん
この歴史的日に、現地に赴くことができたのは、人生の中で最大の喜びのひとつになることだろう。
勝ち負けのない試合だった。
9回2アウト。
思わず手をあげ、立ち上がった。
ただゆっくりと、ボールが飛んでいくのを見送る。
声は出なかった。
本当に、何か夢を見ているようだった。東京音頭が、どこか遠くで響いていた。
振り切った瞬間、完璧な打球。54号に続いての55号ホームラン。
村上が、歴史になった瞬間だった。
オスナが二飛に倒れた瞬間、万雷の拍手が神宮球場にこだまする。
試合が終わり、菅野のヒーローインタビューの最中も、引き上げる選手たちに惜しみなく拍手が送られていた。負け試合にも関わらず、高津監督に拍手が送られ、高津を帽子を取り、手をあげ、それに応えた。
客席は皆立ち上がったまま、帰ろうとしない。
一体我が軍が勝ったのか、負けたのか、一瞥では判断が付かないような光景だった。
そして、村上が姿を現す。
轟々と鳴る拍手。
世界に名を轟かせる村上の姿が、そこにはあった。
まずいプレーもあった。
どうやら試合にも負けたらしい。
けれど、あの放物線を、この目で、この胸に刻み込むことができた。
今日の試合はそれ以上でも、以下でもない。
山田哲人の愉快な仲間筆頭、村上宗隆。
9回2アウトでも、ホームランで追いつけなくても、彼は諦めない。
ならどうして、我々が諦めることができようか。