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思考実験:ラジオトークは”終わって”しまったのか

おおむね以下の考察に基づいた推論が展開され、特に資料に基づく調査は行っていません。つまり真面目に書いていないので、読者諸君が拾ってきたエビデンスを元にした議論や、感情的で重箱の隅をつつくような指摘に反応する気は毛頭なく、話がめんどくさい方向に転がった場合、それなりの対応をするつもりということをここで明確にしておきます。

これは一つの思考実験であり、現実に起きているものに対して何かの影響を及ぼしたいというような意図は一切ありません。諦観の念です。

あと別に私はラジオトークのシンパでもアンチでもなく、毎週水曜日に相方と2MCラジオをやっている一般通過ユーザーです。

  • 最大の特色であった『素人ラジオ路線』を放棄した
  • 恐らく資金調達に関わる方針が大きく変わったのであろう
  • ユーザーを『大事にしすぎた』揺り戻しが起きている
  • ユーザー単価の向上を諦め、新規獲得に大きく舵を切ったように感じられる
  • 既存ユーザーに対して、”文化の希薄化”に対する明確なアンサーがない(多分これが一番問題)
  • ピークアウトしている音声配信市場で、新規獲得のため独自性を捨て補完勢力となってしまった
  • ラジオトークのパーパスが問われる時期になるのでは

特色を自ら放棄したようにしか見えない大型アップデート

140文字に収める美学というものがインターネットには確かに存在する。では、140文字に収まらない美しくないものはどのように処理すればいいのだろうか。運悪く、私はWebサイトを運営していた。つまり、そういうことになるだろう。

ラジオトークから2025年4月11日に発表された大型アップデートのお知らせに、多くのユーザーから賛否両論、声の大きさでいえば非難轟々の意見が、様々な媒体で吹きあがった。

ちなみに私はTwitterもラジオトークもまじめにやっていないので、知り合いの枠にたまたま入ったとき、皆一様にアップデートについての議論をしていることに気付き、そこでようやく状況を把握した程度のものだった。

結局何が直接的に顰蹙を買ったかというと、『入室ログの表示』によって、ラジオトーク固有の匿名性が棄損されるという声が一番大きかったように思われるし、正直私もつまらないことをすると感じた。UI変更については好意的な意見もあったようだが、同時に配信者側はポイントの換金単価が下がることも発表されており、いくらかは間接的な反対のため、『入室ログ表示』をやり玉に挙げた者もいたのではないかと予想される。

さて、このアップデートで変化があった因果について、少し想像を働かせてみたい。

これまでラジオトークは、読んで字のごとく、ラジオを最も重要なモチーフとして事業を展開してきたと感じている。元来ライブ配信機能はなく、ライブ実装後も、地上波ラジオとの協業や、ラジオ色の強い独自イベントを推進していた。

ラジオと音声配信の融合。令和の時代に生まれた新しいラジオの形に惹かれ、ラジオトークを利用していたユーザーは一定数いるだろう。

しかしである。身もふたもない話ではあるが、収益が上がらなければ事業としては成り立たない。

ラジオトークはexcite系の社内ベンチャーとして始まっており、当初はそれなりの資金調達が成り立っていたと見える。ウィキペディア情報でも、2019年に1億円、2020年に3億円、2022年に7億円規模の出資をそれぞれ別の企業から受けていたらしいことが記載されており、この『素人ラジオ』が、フェーズごとに様々な形で注目されていたことが伺える。

理念と現実の狭間

この「出資」というのがなかなか厄介だということを、皆さん意外と知らないのではないかと思う。

企業が資金調達をする方法はいくつかあるが、債務であれば借金なので返せばいい。(もちろん、返せないと怒られるが。)

そしてベンチャー企業と言えば、『株式を売る』という資金調達が割とよく聞く話である。
ざっと調べたところ、少なくとも2020年の出資は第三者割当増資だったので、もろ株を売っている。

株式とは会社を経営する権利。それを他人に売るとどうなるか。

そう、『経営に口を出される』ということになる。
(株を売ったところで一概に経営権を取られるということではないが、その蓋然性は高いということ。細かい話は保険屋さんにでも聞いてください)

私は社長交代を含めた一連の流れは、出資者の意向による部分が一定割合存在するんだろうなぁ、と、考えている。

ラジオトークの社長としておなじみだった井上氏は、代表取締役でありながら自分でも配信をし、各所でトークの可能性を語っていた方であったことは記憶に新しい。突然の社長交代が発表されたのはいつだったか忘れたが、氏は2024年いっぱいを持ってラジオトーク社の経営から退かれている。(調べたところ、現在は下北沢で文芸系の活動をされているようだ。同じく文芸を志すものとして応援したい。経営から退いた今も、bioはラジオトーク愛で溢れていた。)

現在は井上氏時代にも取締役を務めていた大槻氏が代表取締役を務められているが、この社長交代について井上氏は配信内で「喧嘩別れとかではないので詮索はしないでほしい」とおっしゃられていたような気がするので、とりあえず経営問題の考察についてはこれくらいにしておく。

さくっと書いて寝るつもりが、思いの外記事が長くなっていて驚いている。

拡大路線への舵取り

ここまでの冗長な話を纏めると、

当初は「トークの可能性」を信じて運営を始めたラジオトークだが、思いの外利益が出ず、出資者から「もっと収益が出るようにテコ入れしろ」と、圧力がかかったんじゃないの?

ということである。

正直この時点でもう結論はほとんど出ていて、「我々ユーザーがもっと金使ってれば意味の分からんアップデートはなかったんじゃないの」ということいなるわけだが、もう少し話は続く。

ラジオトークは、ユーザーの意見をよく聞く珍しいアプリだったと感じていた。

いわゆる公式ユーザー(これも廃止されることが発表されている)が複数人存在していたが、彼らは他アプリのような単なる広告塔的な存在ではなく、運営側の立場に立ち、場合によっては経営にも意見を反映させるような、いわば社外執行役員的な役割を担うユーザーだった。

さらに言えば、ラジオトーク内で活躍しているユーザーと二人三脚で地上波ラジオの出演をプロデュースしたり、ラジオトーク内でのオン・オフイベントを共同で企画したりと、ユーザーと運営の垣根が非常に低い運営体制だった。

私はそういうのは全く縁がなかったが、現在(2025年4月29日)アップデート内容バナーから確認できるところによると、運営とのディスコードを通じた意見交換などもかつては積極的に行われていたようだ。

前項に通ずることろがあるが、「ユーザーにとって都合のいいこと」が、必ずしも「運営にとって都合のいいこと」ではない。

公式番組についても、制度改変によって置き換えられる「トップトーカー」なる制度は、いわゆる投げ銭受け取りランキング上位の人間に付与されるものとなるようだ。付与条件の分かりやすさはあるものの、運営とユーザーの距離を広げ、マネタイズを強く意識したものに感じられる。

入室ログの表示についても、マネタイズに繋がるデータがあるのだろう。アップデート時の通知文にも記載があったが、結局のところラジオのようなDJ→リスナーという一方向のやり取りではなく、ユーザーが双方向のやり取りを重視しているという(風に捉えられても仕方のない)データが出てしまっているのだ。

真の意味でラジオトークを「ラジオ」として利用していたのは一体どれくらいなのか。毎月まとまった額の投げ銭(課金)をしていたのはどれくらいなのか。

悪因悪果とはこのことか。

ここから先、お品書き通りに論を展開したところであまり意味がないように思えてきたが、始めてしまったものは仕方がないのでもう少し書いてみよう。

いつまでラジオであろうとするのか

さて、もう寝たいので(深夜3時)、なぜ一部のユーザーがあんなに怒ったのか。ざっくり考察してみたい。

私が感じた最も大きな理由は、「これまで(少なくとも私と相方は)ラジオトークがプラットフォーマーとして原点にしていた素人ラジオという文化に共感していたのに、その文化をマネタイズのために諦めてしまったように見える」という部分だった。

私は配信系だと、これまでニコニコ、スプーン、ラジオトークでまともに活動をしてきたが、ラジオトークは他の配信媒体とはしっかり差別化がされており、他の媒体よりも、「トーク(私が嫌いな言葉で言えば、『語り』)」を好むユーザーが多い印象を持っていた。

スプーンも数年活動したが、やはりカジュアルな雑談の延長みは拭えず、ユーザー同士の人間関係を中心にコンテンツが回っていることは否めず、一時期は『ティンダーより出会える出会い系アプリ』として揶揄されていたことは記憶に新しい。

ラジオトークは人間関係こそあれども、比較的硬派な「トーク」を中心とした文化から、コンテンツのジャンルや内容が先行している(ように感じる)ところが私には大変好印象だった。

今回ラジオトークが取った方針の転換は、そんなところからの門戸開放宣言。これまで理念や文化に守られていたコンテンツが、新しい(あるいは、他媒体というむしろ古い)人々の波に、無防備に晒されるということを意味している。

ラジオ配信に、歌配信に、コメント読みを執拗に求めるユーザーが現れるようになったら?

双方向型の配信であっても、取りたくないコミュニケーションを強要されるようになったら?

新しい配信者をディグる短時間滞在が、荒らしと判断されてしまったら?

他にもいろいろあるだろうが、では、これら既存ユーザー(私)の懸念に対して、運営はどんなアンサーを提示してくれたのか。

それがない。

これこそが一番問題だと、私は強く感じている。

前述のとおり、これまでのラジオトークは、運営とユーザーが同じ目線に立って、共に作り上げてきたものだった。

(恐らく)売り上げの問題でユーザーとの距離を取り始めたというのが本稿の主張だが、つまり我々ユーザーは、ただでさえ運営サイドが露骨に態度を硬化させていることを感じている。

その上で今回の大型アップデートである。

このかじ取りは、(私の予想だと)経営側にとっても本意のものではないのかもしれない。

だが、そうであれば、そうであればこそ、(というかそうでないのであれば猶更)これまでラジオトークを支えてきたユーザーに対して、共に作り上げたラジオトークの根底にある「理念」は守り続けるということを(嘘でも)表明してほしかったと思う。

何というか、それが一番残念です。

ラジオトークは今、開かれた市場に対して大きく扉を開く選択をした。

しかしその市場は既にレッドオーシャン。顧客の取り合いになったとき、ラジオトークにある「優位性」とは一体何なのだろう。

皮肉な話だが、市場に打って出るときに捨ててしまった「何か」こそ、後発組であるラジオトークが持っていた最高の「優位性」だったのだろうと思うと、なんとも寂しいばかりである。

ラジオトークのパーパス、存在意義とは。

みんなで作り上げたラジオトークだと思っていた。
もうユーザーはそんな高尚なことを考えず、黙って課金だけしておけ、ということなのだろうか。

最終的に身売りとかになったら……悲しいね

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