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守備番号4と愉快な仲間たち~スワローズであるということ~ 2022/9/24

守備番号4番。その場所を守る選手を、我々はセカンドベースマンと呼ぶ。

これは燕のセカンド山田哲人と愉快な仲間たちの戦いの記録だ。

ずっと空いていた、山田の「隣」

宮本慎也のあと、スワローズの遊撃手はなかなか固定できなかった。

かつて燕の二遊間と言えば、セカンド田中、ショート宮本。

セカンドは山田へと代替わりを果たしたが、ショートの代替わりはそう簡単にはいかなかった。

川島慶三、藤本敦士、川端慎吾、森岡良介、大引啓二、西浦直亨、元山飛優。

名手の後、様々な選手が遊撃のポジションに就いたが、なかなかどうして、定着まではいかなかった。

球団も遊撃手を多く獲得した。

近年だけでも、荒木(2009ドラ3)、谷内(2012ドラ6)、西浦(2013ドラ2)、廣岡(2015ドラ2)、渡邉(2015ドラ3)、宮本丈(2017ドラ6)、吉田大成(2018ドラ8)、長岡(2019ドラ5)、武岡(2019ドラ6)、元山(2020ドラ4)が遊撃手として入団。

山田哲人(2010ドラ1)その人も、高校3年次は遊撃手として活躍し、遊撃として入団した選手だ。

(遊撃手は身体能力が高い場合が多く、他のポジションにコンバートしても活躍できるケースが多いため、ヤクルトに限らず遊撃はドラフトにかかりやすいと言われている*要出典)

その間に中堅~ベテラン選手も、藤本(阪神から)、森岡(中日から)、大引(日本ハムから)、エスコバー(メジャーから)などを獲得しているが、皆、完全定着には至らなかった。

山田の守るセカンドの隣、遊撃に誰が落ち着くのかは、長い間セカンドを守り続けている山田にとっては非常に重要だ。

まずいプレーやミスがあったときに選手を入れ替えることは簡単だが、野球はチームスポーツだ。特に二遊間は、併殺送球、盗塁カバー、捕手から投手への返球のカバー、二塁牽制サインプレー、外野からの中継プレーなど、スポナビ速報では書ききれないほどの情報量を交換し合っている。

ということは、当たり前だが急造の二遊間ではミスが出やすい。

中日の荒木ー井端は全盛期、アイコンタクトや仕草を見て、互いが何を考えているのかを理解できたという。だからこそ、二遊間はコロコロ変えるべきではない。使い続ければ二遊間でのコミュニケーションが蓄積されていき、センターラインとしての守備は時間経過とともに堅くなる。

まさしくそれを体現しているのが、今回取り上げる燕の正遊撃手、長岡秀樹だ。

長岡秀樹について 「これはダメだ」と思ったオープン戦

オープン戦、対ソフトバンク戦。

2021年は、元山と西浦を併用しての日本一だった。

シーズン前の廣岡放出は、元山への大きな期待の裏返しだと思ったし、西浦を使いつつ、元山を育てていくというプランなんだと勝手に了解していた。

だから長岡がショートを守っているのを見たときも、単純に控えの枠として経験をさせているんだとばかり思っていた。

長岡は春のキャンプで、コロナウイルス感染症による欠員の関係で1軍キャンプに帯同することになった。いわば、「棚ぼた」の1軍だ。

オープン戦では、平凡なゴロで併殺を取れないなど、守備の面での課題がかなり色濃かった。それを見て、「長岡はまだ時間がかかる」と落胆したことを、今でもはっきりと覚えている。

そんな長岡の開幕スタメンを、誰が予想しただろうか。

開幕から、おいしいところで打ちまくり、一時は打率3割越え、2番を任されるまでに打ちまくる。

その時点では、バッティングを買われてのスタメン出場だと思っていたが、守備固めが出されることもない。フルイニング出場は、着々と伸びていく。

そしていつの間にか、長岡の守備範囲が、春のオープン戦とは全く変わっていることに気が付いた。

うますぎるのだ。

気になったので調べてみると、守備範囲を表す指標UZRは優に10を超える。

当時の数字の比較をすると、日本一の遊撃手である源田に肉薄するほどの成績だ。

最悪なグラウンドコンディション、最高のショートストップ

2022年9月24日

前日は豪雨の中試合を強行し、チームもファンも酷い目に遭った。

翌日24日も台風の影響の大雨によって、グラウンドには水が浮くどころか水たまりと言うかもう池ができる状態。

横浜の残試合数の兼ね合いもあり、試合は19時プレイボール(実際に試合が始まったのは19時25分ごろ)という強行スケジュールを採った。

試合は幸先よくヤクルトが先制するが、走塁中に塩見が足元を滑らせ軽く転び、2回の守備から交代。丸山がセンターへ。

一体全体球団は、選手の体と売り上げとどちらが大事なのだろう。

そんな時、平凡なゴロがショート長岡のもとへ。

長岡は落ち着いてボールを捕まえると、無理をせずワンバウンド送球でボールを一塁へ。

これは23日の試合でも長岡が徹底していたことだが、アイディアのある非常にいいプレーだと思う。

ショートは、最も一塁から遠いポジションだ。そのため強肩や、ロングスローがもてはやされるわけだが、一番大事なのは、走者をアウトにすることだ。

矢のような鋭い返球でなければアウトにできないのであれば仕方ないが、余裕でアウトにできるのに強いボールを投げ、暴投してしまっては元も子もないわけである。

雨で足元もボールもつるつる滑る状況で最もミスが少ないのは、出力が小さく、確実なプレーをすること。そんな長岡の守備に対する意識が垣間見れたプレーのように感じた。

そして極めつけは、山田との併殺だ。

前日からの断続的な雨で、グラウンドコンディションは劣悪だった。

併殺の場面で、恐らくボールが不規則に跳ねた。山田は倒れこむように捕球し、一杯になって二塁ベース上にボールをトスする。

完全に一塁はセーフだと思った。

だが、二塁ベース上でボールを掴んだ長岡は強肩を発動。

打者走者を完全に捕殺。

この使い分けができる長岡の守備は、間違いなくトップレベルの守備だ。

ついに埋まった山田の「隣」。

打率こそ.245ほどだが、チームに対しての貢献度は計り知れない。

ついに優勝マジックは2へ

サイスニ―ドの気迫あふれる好投、オスナの打棒の爆発、山崎、宮本の固め打ち。

この日の勝利により、ヤクルトの優勝マジックは2へと減少した。

25日の試合に勝利すれば、2年連続のリーグ優勝の達成だ。

最終盤にして、川端が、青木が帰ってきた。

役者はそろった。

降り続いた雨は止んだ。

さあ、歓喜の瞬間はもうすぐそこだ。

山田哲人と愉快な仲間たちは、今日も神宮球場で躍動する


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