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樹(tatsuki)

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#だから今シャッターを切った 其の七

これから僕が綴るのは、僕の心の中の、何でもない日常の、ほんの1ページ。

カメラを趣味とする僕が、伝えられること。

“本当は、伝えなくても良いこと。”

“なぜ今シャッターを切ったのか”

読み終えたら、TwitterやInstagramで検索してみてください。

写真が載っています。

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今年初の投稿です。

あけましておめでとうございます。

今年もこの拙い記事に目を通してくださり、

ありがとうございます!

今回が初めての方、

今年からどうぞよろしくお願いします。

少しずつ、でも確実に、続けていきます。

写真も言葉も、大事にしていきます。

さっそく余談です。

あっという間に、

1年が終わってしまいました。

やっぱり僕の中では、

1年が始まるというより、1年が終わる。

気が付けば残してしまったものばかりだなと、

まぁ、毎年思うことですが。

昨年の1月。

横浜の伊勢山皇大神宮という所に、初詣へ。

賽銭箱の前で、

「どうせ準備してないだろ!」

と5円玉を手渡された。

「うわ、さっすが!助かるー!」

と上着のポケットに手を突っ込み、

本当は準備してあった5円玉をそっとしまった。

お参りを済ませ、御守りを買う。

1年前に何を願ったのかなんて、

覚えている人はいるのだろうか。

覚えていたとして、

叶っていたとして、

叶えたのは神様だろうか。

僕はそうは思わない。

もし昨年の願いが叶っていたなら、

それは紛れもなくあなたの努力で、

全ては自分次第だと思う。

” 御守りにはひとの想いが乗るらしい “

なんて、本当か嘘かもわからぬ話に乗って、

友人と互いに御守りを送り合った。

あいつは事故に遭わなかっただろうか。

僕は昨年1年、無事だった。

車の左ミラーが電柱に毟り取られた程度で、

体はなんともなかった。

あいつの想いが乗っていた…事にしておこう。

また冬が来て、

昨年のあの日と同じジャケットを羽織る。

外へ出て、寒くてポケットに手を突っ込む。

冷たく、硬い感触。

ポケットにはまだ、

あの時の5円玉が入ったままだった。

御守りなんかよりこっちの方がよっぽど、

想いが乗っている気がした。

今年はこれをお賽銭しました。

神様も仏様も信じちゃいないけれど、

ひとの想いは、信じていたいなと思います。

自分の想いも。

今回は12/28にリリースされたばかりの曲を。

【 ヨンナ〜 (feat.柊人) / Leonald 】

沖縄出身の2人。

“ヨンナ〜”とは沖縄の方言で、

・ゆっくり

・のんびり

・気楽に

などの意味があるそうです。

1番の中で、

“俺次第で変われるFutureなら楽だ”

とLeonaldが歌います。

これは2017年に彼が出した曲、

【Slow Life】の冒頭で歌った詩と同じです。

2番では、

“君次第で変わるFutureだぜ相棒”

と歌います。

数年経って、あの日の詩を回収、

そして僕らを導いてくれたような…。

いや、僕を導くのは僕で、

あなたを導くのはあなたかもしれない。

僕は最近、

地元の友人の仕事を手伝ったりしています。

高校生のころ一緒にバイトをしていた友人と、

また一緒に働けることを嬉しく、

そしてそんな友人を誇らしく思います。

地元が恋しくなる1曲です。ぜひ。

さぁ、そろそろ行きましょう。

過去にふけって、秋に戻って。

11月。

随分前に遡ることになってしまった。

写真を撮ると決めた日。

久しぶりに写真のために外に出ようと決めた。

やっと涼しくなったと思えば、

息つく間もなく肌寒くなった。

ベッドから出るのが段々と億劫になる。

自作の厚手のパーカーを羽織り、

ベランダへ出てタバコに火をつける。

雲ひとつない、これぞ、快晴。

数日前、自転車を買った。 

安物の中古品だが、状態は悪くない。

艶消しの深緑色。

(後に飲み会で後輩達に、

 勢いで “モヒート” と名付けられる。)

ブレーキ鳴きがしていたのを思い出して、

タバコを咥えたまま部屋で工具を拾い、

サンダルを履いて駐輪場へ。

ふと、昔よく見た休日の親父の姿を思い出す。

“工具を拾う”という表現で

部屋の有り様は察してほしい。

そしてどうか、どうか放っておいてほしい。

共用物を粗末に扱うことは決してないのだから、

僕の空間をどうしようが、僕の勝手だ。

と、もっともらしい事を言って自分を防衛するのは、

僕の得意技で、とても悪い癖だ。

駐輪場にしゃがみ込み、

そそくさと作業を始める。

少しブレーキの角度を変えたり、

やすりをかけてやる。

たったこれだけで大人しくなる。

なのに街中を走る彼らは自転車の悲鳴が、

気にはならないのだろうか。

シンクに残る水滴。

タイヤに挟まる小石。

片方だけすり減った靴。

掃除の後に気がつく髪の毛。

グラスの結露と張り付くコースター。

僕の感じる日々の小さなストレスは、

他人からすればどうでもいい事なのだ。

別に知らなかったわけじゃない。

ただ、思い出しただけ。

車は、自由が利かない。

止める場所や駐車料金を考える。

そして何より、

“車は急には止まれない。

僕はこれを、危険を感じた時よりも、

素敵な景色を見つけた時に強く感じる。

その点、自転車は良い。

いつでも止まって引き返せる。

安物の自転車だが、

いつもよりほんの少し先へ、

連れて行ってくれる気がする。

ほんの少し違う景色を、

見られる気がする。

自転車に乗って家を出て、まず買い物に向かう。

家の前の少しの坂を勢いよく下る。

信号で停止。

ブレーキ、好調。

地図がなければ遠くへは進めない。

ドンキホーテでスマホホルダーを購入、

ハンドルにスマホを固定した。

ログポースを手に入れた気分だ。

(ワンピース用語です、すみません。

 今アニメの600/1000話です。先は長い。)

秋、昼過ぎ。

風は冷たいが、日差しが強く暖かい。

寒いでも暑いでもない、

この季節の、この時間が好きだ。

僕の”好き”を後押しするように、

駐輪場に枯葉が舞う。

乾いた音と日差しの暖かさに気を取られ、

歩みを止めてしばらく見つめていた。

思わずひとつ、シャッターを切った。

そしてまた走り出す。

目的地へと、地図を辿って。

走りながらふと気がつく。

というより、思い出した事がある。

知っているはずなのに、

わかっているはずなのに、忘れてしまう。

日々の当たり前に埋もれてしまう。

人生は一度であること、

人はいつか死ぬこと、

僕が僕であり、

あなたがあなたであること。

頭ではわかっているのに、

知らないふりをしている。

体感して思い出し、また忘れる。

その繰り返し。

悪いとは思わない。

だってきっと、

忘れてしまわなければ狂ってしまう。

忘れることは、

生きるのに必要なことだと思う。

それくらい世界は残酷で、窮屈で、儚くて、

それでいて、涙が出るほど温かい。

僕が伝えたいのはそういうものだ。

僕は忘れていた。

そして体感してまた思い出す。

自転車って、

登り坂はきつい。

途中、駅の周りに廃れた商店街を見つける。

シャッターはほとんど閉まっている。

半分開いたシャッターを見つけても、

「17:00〜」とか書かれた居酒屋が数店。

3時間も待っていられないし、

そもそも今日は自転車で来てしまった。

その先に、1店だけカフェを見つける。

たまごをメインとしたお店、

外からは店内が見えず、少しだけ躊躇する。

お店の前の灰皿で一服して、

次に綺麗な空気で深呼吸をする。

秋になって乾き始めた空気がスッと入る。

二日酔いの朝の冷たい水のような爽快感だった。

ほんの少しの勇気で店内へ。

店内に入ってすぐの所で、

“若き日の宮崎駿”のような人が食事をしている。

そのおじさまが奥のキッチンに向けて、

「お客さーん!」

と、大きな声でひとこと。

奥から店員さんがやってきて、

「あーごめんなさいね!〇〇さんありがとう!

 いらっしゃいませ〜。」

どうやらこのおじさまは常連らしい。

席につき、アイスコーヒーと”きり定食”を頼む。

(きり定食というのは、

 新潟は魚沼の郷土料理”きりざい”の定食で、

 納豆や野菜を刻んで混ぜ合わせたもの。)

要望通りコーヒーが先に来て、

しばらくして定食が届く。

ご飯ときりざいの上に、

キラキラと輝く卵黄。

卵を割ろうかとスプーンを伸ばした時、

店員さんが慌ててこちらへ向かってくる。

「すみません、

 コーヒーにつけるの忘れてました!」

黄色い星型のクッキーが届けられた。

チョコペンでにっこりと笑顔が書かれていて、

なんだかほっこりする。

あたたかい気持ちで定食を食べ始め、

付け合わせまで食べ終えて、

思わず笑みが溢れる。

またひとつ、シャッターを切った。

昼食を済ませ目的地へ。

30分ほど走っただろうか。

Googleマップが残り5分と示したところで、

森の入り口にさしかかった。

新しく手に入れたこのモヒートを、

ここへ置いていくことになる。

スマホホルダーと一緒に、

ロックを買っておいてよかった。

モヒートを森の入り口で待たせて中へ。

中は木々に囲われ、

足元までが緑でいっぱいだった。

しばらく歩くと木々の隙間、

その奥に、強く光が差し込む場所があった。

きっとあそこに立ったら意識を失って、

目が覚めれば異世界だ。

馬鹿げたことを思ってまた歩き出し、

数秒経って足を止める。

やはり、残しておこう。

何もない森だけれど、

あの光にはもう出逢えないかもしれない。

そう思って少し引き返し、

またひとつ、シャッターを切った。

そこからまた数分歩いて、やっと目的地へ。

太陽はもう落ち始めていた。

ということは、

帰りにはもう、あの光は見られなかったのだ。

撮っておいて、よかった。

写真の現像が益々楽しみになる。

森を抜け、ひらけたところへ出る。

体育館ほどのそのスペースに、

所せましと咲く、

秋桜。

やっと目的地だ。

左右を見て、

近くに誰もいないことを確認。

小走りで近づいた。

車で来ていれば、

ここまでの喜びはなかったかもしれない。

達成感は、時間と手間に比例する。

便利なものは、様々なことの効率を高め、

時間を有意義に使える。

おかげで、一つのことに時間をかける機会は

減ったかもしれない。

その分、何かを達成する感動も、

減ったのかもしれない。

物事は良い一面だけではない。

勿論、悪い一面だけでもないのだ。

秋桜へ近づく。

しゃがみ込むと、

余計なものが写らず秋桜が映える。

まずひとつ、シャッターを切った。

いろんな角度で、何度も撮った。

綺麗に見えるように。

綺麗な花を。

綺麗な花だけを。

そう、綺麗な一面だけではないのに。

密集し過ぎてみえない花。

虫に喰われてしまった花。

しおれてしまった花。

茎ごと倒れてしまった花。

レンズさえ向けない雑草だってある。

インターネットで賞賛を受ける写真達は、

きっと綺麗だけを切り取っている。

素敵だと思うし、上手いなとも思う。

ただ僕には、あまりに眩し過ぎる。

僕は全てを残していたい。

あの日見て、あの日感じたものを残したい。

だから、綴っています。

これからも綴っていきます。

だから、撮っています。

もっと沢山、撮っていきます。

綺麗な花と、しおれた花と、

傾いた花と、歪な世界と。

そんな僕の気持ちを後押しするように、

空がほんのり灯った。

だから今、シャッターを切った。

最後の1枚は Twitter 又は Instagram にも

投稿しています。

#だから今シャッターを切った

で検索してみてください。

いいねやリツイート、

読んだ感想等いただけると励みになります。

それではまた、残したい景色に出会うまで。


連載

コメント

  1. mel より:

    毎度の事ながら、言葉選びが好みすぎて、1度目は駆け足で読んでしまいます。(いつもちゃんと後からゆっくり読んでます‍♀️)
    シャッターを切る楽しさと喜びが伝わってきて、久しぶりに自分もカメラ片手に出かけたくなりました。
    写真1枚1枚に、沢山の想いが込められていると思うと、より素敵な写真に見えました。
    これからも楽しみにしています。

    • 樹-tatsuki- より:

      いつも感想ありがとうございます。
      伝えたいことが何なのか、まだまだ迷走してますが笑
      ゆっくり続けていきます。
      たくさん撮りましょう

  2. ナハト。 より:

    丁重に丁寧に運ぶ言葉たちを、写す景色を、今年も楽しみにしています。

    • 樹-tatsuki- より:

      コメントありがとうございます!
      昨年も読んでくださっていたなら、コメントをくださったこの一歩が本当に嬉しいです。
      今年もたくさん切り取って、今年もたくさん紡いでいきます。
      また気長にお待ちください…!

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