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樹(tatsuki)

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#だから今シャッターを切った 其の五

これから僕が綴るのは、僕の心の中の、何でもない日常の、ほんの1ページ。

カメラを趣味とする僕が、伝えられること。

“本当は、伝えなくても良いこと。”

“なぜ今シャッターを切ったのか”

読み終えたら、TwitterやInstagramで検索してみてください。

写真が載っています。

余談。

僕は

小説が好きで、

珈琲が好きで、

ウイスキーが好きで、

写真を撮って、

文字を綴って、

服を創っている。

が、芸術とは無縁。

絵を描くことは嫌いじゃない。

と言っても、お遊びの模写程度。

しかし、それを見られるのは嫌いだった。

恥ずかしかったのだ。

小学6年の時の、授業参観だったか…。

確か、母親も見ていたような記憶がある。

前にここで綴った、大事な言葉をくれた先生。

気さくで明るいその担任にさされて、

黒板に書かれた漢字を読みあげた。

「ししゅんき、です。」

「そうだな!

 これ”思春期”と書いて、たつきとも読みます!」

クラス中が大爆笑。

みんなで育てていたトマトに負けないぐらい

赤くなっていたように思う。

恥ずかしさのあまり、

大好きだった先生に悪態をついたのを覚えている。

僕は、プライドが高い。

十代の頃の僕は、

「紅葉狩りなんて狩りじゃない」

などと屁理屈をこねるような、

感性の乏しいお子様だった。

当時の僕の言い分はこう。

そもそも”狩り”は、動物や魚を狩ること。

栄養をとって空腹を満たす、

その過程にあるもの。

その点では果実も間違いではない、

しかしそれは”刈り”ではないのか。

穀物と同じく収穫をする、刈り取る、

という意味合いからなのであれば納得がいく。

しかし紅葉を狩るというのはどこか腑に落ちない。

そもそも刈り取ってすらいないのだから。

狩った後に空腹を満たす事が魅力的で、

赤い葉の集まりを見る事に何の意味があるのか。

と、、、。

まぁよく調べもせずに屁理屈をこねたものだ。

Google大先生に聞けばすぐにわかったこと。

そもそも”狩り”という言葉自体に、

“山野で植物を鑑賞する”という意味がある。

ならば僕がこねていた屁理屈は、

屁理屈以外の何物でもないということになる。

僕は、プライドが高く、

偏った思考を持っている。

これは芸術の天敵だと思う。

先日、久々の同級生に会った。

“同級生”としか言いようがないのだが、

なんとも不思議な関係で、

彼と僕は小学校1年が同じクラス。

たった、それだけである。

僕はそのまま2年に上がり、

彼は新しくできた学校へ編入した。

その後の学生生活の中で一緒になることはなく、

高校に上がるまでは顔を見ることもなかった。

高校生の時、共通の友人を介して再会、

長く話した記憶もないが、

数年ぶりというのも特に感じさせなかった。

月日が流れ、つい先日。

突然2人で会うことになった。

ちゃんと話すのは10年以上ぶりだろうか、

なのに不思議と、家を出る足は重たくなかった。

久々の再会に心がほどけるように感じた。

大事にしようと決めた時間が、

いつの間にか零れ落ちた。

僕らは牛丼を食べて、始発に乗って帰った。

27歳の今、

様々な絵を見て、デザインを見て、音を聞いて、

良し悪しは分からずとも、

好き嫌いははっきりとしてきたように思う。

そもそも良し悪しなんて無いのかもしれない。

僕は今、僕の世界を広げている。

様々な芸術に触れ、

様々な人と話をする。

過去の自分では受け入れられなかった世界を、

少しずつ取り込んでいる。

8月、またひとつ歳をとった。

“もっと早くやっておけば” と後悔する事なんて

数えれば切りも途方もない。

日を追うごとに重たくなる足。

その歩みさえ止めずに居られれば、まだまだ。

僕もあなたも、まだまだ、これから。

今回の話に、

少し似た曲があったのでご紹介しておきます。

意識を変えれば視野が変わる

あとで意味がわかる

art (feat.FLEUR) / ZIW

hiphopが嫌いでなければ、ぜひ。

それでは、散歩に出かけよう。

世界に転がるアートに触れて。

2022年、5月某日。

初めて、美術館に足を運んだ。

正確には数回、行ったことは、ある。

しかしほとんど、記憶にないのだ。

理由は余談で話した通り、

興味がなかった。

ただそれだけ。

様々なことに興味が湧くようになったのは、

一人で暮らし始めた4年前。

地元の友人と会う機会が減った分、

色々な物に触れる機会が増えた。

勿論はじめは寂しい気持ちもあったが、

今はひとりを楽しむ事ができる。

皮肉なことに、

交遊関係が狭まるに連れ、

僕の世界は広がった。

友人と約束を取り付け、当日を待つ。

行きたかった美術館は休館日だった。

相変わらずの無計画さに嫌気もさしたが

そんな性格すら楽しめているので良しとする。

友人が良しとしていたかどうかは、

怖かったので問うのをやめた。

一つの道が閉ざされる事は、

別の道を歩むきっかけになる。

気にもしていなかった新しいものに出逢う、

チャンスに変わる。

諦めて友人と向かったのは

べルナール・ビュフェ美術館。

名前の通り、

ビュフェというフランスの画家の作品を、

ところ狭しと展示している。

目的の場所とは違う。

それでも楽しみに思えてしまうのだから、

僕は知らないことを知るのが好きなのだろう。

海沿いの道を飛ばし友人の元へ。

タバコに火をつけ、運転席の窓を5cmほど開ける。

照りつける太陽と吹き込む風の心地よさに、

思わず窓を全開にして走り抜けた。

友人を拾い目的地へ。

丘を登った先の駐車場に車を止め、

近くのカフェで昼食をとる。

大きな窓が幾つもある店だった。

店の真ん中の席に居ても、

外が晴れだとわかるほどに明るかった。

注文したパスタが届き、

思わずひとつシャッターを切った。

昼食を済ませて店を出る。

美術館のすぐ脇には、小さな自然公園があった。

周囲に広がる緑に目を向けると、

ベンチを見つけ思わず足を運ぶ。

レンガを数段上がった先に、

木製の柵で囲われた4畳ほどのスペース。

木製のベンチがひとつ。

たったそれだけ、

なのに何故か心は弾んだ。

昔から高い場所に惹かれるのは、

僕の背が低いせいだろうか。

ベンチまで行きその先を見下ろすと、

目の前に橋を見つける。

橋へ向かうための脇道は足場が悪く、

はやる気持ちを抑えながら慎重に降りる。

橋の目の前。

強風が吹けばグラグラと揺れそうな木製の橋。

緑に囲われたその橋は、

ずっと、ずっと奥まで続く。

吸い込まれそうになるのを堪え、

またひとつ、シャッターを切った。

一通り写真を撮り終え、

何度かジャンプをしてスリルも楽しんだ僕は、

満足して美術館へ向かった。

入館料を払い中へ案内される。

湾曲した廊下に

幾つも絵画が飾られている。

テーブルの上のグラスや花瓶、レモンなど、

日常的なものが多かった。

奥へ進み別の部屋へ入ると、

今度は僕の身長より大きい作品が幾つも並ぶ。

先ほどと同じような机上を描くもの、

室内全体や、自画像や街など、

描くものは増えていったが

どれも輪郭の線の力強さが印象的な作品だった。

もっと先へ行くと、

自然の風景などが飾られ始めた。

先ほどまでの印象的な作品と違い、

柔らかく心温まるような作品だった。

どの作品にも、

サインと書いた年が書かれていた。

彼がどんな人生を送り、

どんな心境の変化があったのか、

僕に分かりはしないし、

分かる必要も特に無いだろう。

しかしその作風の変化に、

年月の経過を感じ、

彼の人生を追っているような気になった。

全ての作品を見て出口へ辿り着く。

出口の壁にはこう書かれていた。

素直な愛情を持って絵と対話して欲しい。

絵画はそれについて話すものではなく

ただ感じ取るものである。

ベルナール・ビュフェ

友人を送り、ひとり帰路につく。

高速道路があるすぐ脇の道を、

音楽もかけずゆっくり走った。

ビュフェの言葉はその通りだと思う。

やはりこの記事は、

景色を切り取ったその経緯は、

伝えなくて良いのだ。

何故綴っているのかなんて、

今はもうよくわからない。

そんな暗い思考に耽る。

風は昼間よりも冷たく、重く感じた。

信号待ち。

運転席から、

高速道路の廃れた透明な柵を見る。

スプレーで何か書いてある。

あれは落書きだろうか、アートだろうか。

どちらにしても公共物に勝手に描く行為は、

決して許される事ではないだろう。

それでも、その文字たちと透ける夕陽を、

美しいと思った。

今この瞬間は、アートで良いと思った。

ただ、そう感じ取った。

だから今、シャッターを切った。

最後の1枚は

#だから今シャッターを切った

で検索してみてください。

それではまた、残したい景色に出会うまで。

追伸。

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買ってくださいとは言いません。

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Frame The Scenery.あの情景を切り取って。好きをまとって スキップで あの街へ。誰かの日常が素敵な景色で溢れるように。ほんの少し明るくなりますように。どうか暖かくありますように。何気ない日常に寄り添うようなアイテムを少しずつ...

それでは、本当に、また。


連載

コメント

  1. mel より:

    いつもの事ながら、心にストンと落ちてくる言葉たちに、1度目は吸い込まれるように、流れるように、スクロールする手と目が止まりませんでした。
    2度目、3度目はちゃんと時間を作って、お気に入りの紅茶でも飲みながら、ゆっくりじっくり読みたいです。
    いつも素敵な記事をありがとうございます。

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