この街で過ごす3度目の春。
桜も開花し、街は華やかに、色づき始めた。
となりを歩いてた人は、別な場所で生きてるらしい。
あの頃より少しは大人になった私。
変わらないのは、手元にある煙草の銘柄。
2022年3月28日
私は25歳になった。
四半世紀。20歳と30歳の間。
子供の頃に想像した25歳って、ずっとずっと大人で、もしかしたら結婚してるかも、なんて思ってたのかもしれない。
現実は独身、社会人2年目の終わり。
実家を出て早2年。一人暮らしになって5ヶ月。
いつ死んでもいい、なんて薄っぺらく思ったり、生きていても仕方ないって、本当に思ってた20代前半。
でも、素敵な人達に触れるようになって、偉大な人達の背中を追いかけるようになって、なにより自分と向き合えるようになって。
私は私の人生を全うしたい、と思うようになった。
これまでの人生、失敗も挫折もあったけど、この人生でよかったと思っているし、
いつか迎える終わりの間際、「あー面白かった」と思える人生だったらいいなって思う。
人生には多くの記念日がある。
命を授かった日、産声を上げた日、初めて笑った日、立った日、歩き始めた日、喧嘩した日、学校に入学した日、卒業した日、初めて恋人ができた日、別れた日、社会に出た日。
言い切れない、数え切れないほどの節目。
それぞれの人が記念日をどう捉えるか、そこに正解も間違いもない。
だけど私は、できる限り記念日を大切にしたい。
それは当たり前に来る日じゃないから。
生きていることも、明日が来ることも、当たり前じゃないから。
私は死んだように生きることはしたくない。
一日の中で、これはできた!と、自分を褒めてあげられるような生き方がしたい。
今日の記事は24歳最後の私から、25歳の私への手紙。
時刻は12:45。起床。
15:00の美容室には余裕で間に合う。
布団の中で微睡んでいると宅急便のお姉さんから電話。
「今日必ず受けとってくださいね!!!」
「はい……。お手数お掛けしてすみません……。」
なんや、誰からの荷物や。と思いつつ、きっとホワイトデーに大好きな彼、といえば紛らわしいが、仲の良い友人からいただいた贈り物がようやく届くんだろう。
今日は大人っぽい気分で出かけたいから、マルジェラのレイジーサンデーモーニングを纏った。
そして、いつもより丁寧に身支度を整えた。
部屋にいつもの冷え込みはなくきっと今日は暖かいのだろうと、薄手のノーカラーシャツにワイドパンツ、薄手のブラックのトレンチコートにブラックのコンバースオールスター。シアタープロダクツのショルダーに、大好きなメビウスオプションパープルと必要なものを詰め込んだ。
せっかくだから桜を見ながら歩いて駅に向かおう。
2年前、縁もゆかりも無かったこの街も、気がついたら私の日常になった。
歩いてすぐ今日は暖かいを超して、暑いと感じた。
天気予報のアプリを開くと20度。そりゃ暑い。
羽織っていたトレンチコートを左手にひっかけると、左手に開花した桜が。
「(曇りなのが惜しいな。)」
あえてスマホは取り出さなかった。
引っ越してすぐ、よく朝に立ち寄っていたセブンイレブンに入った。
お目当ては大好きなアイスカフェラテ。
邪道だけど、アイスカフェラテにシュガースティックをいれて飲むのが好きだ。
「(懐かしいなぁ。よくあのひととここに寄って2人でコーヒー飲みながら歩いたなぁ。)」
私はこの街に、あの頃大好きだった人と一緒に暮らすために越してきた。
いまはもう一緒じゃないけど、この別れは残念だとは思わない。
私たちの幸せのためには必要だったし、悲しいこと以上に彼と過ごした日々は私を大きく変えてくれた。
この話は、また別な日に。
少し進んで、私はこの角を右に曲がるのが好きだ。
曲がるとすぐ小さな公園がある。
今日は若めのお父さんと小学校低学年ぐらいの男の子がキャッチボールをしていた。
「(いいなぁ。私も結婚したいなあ。)」
カフェラテを1口飲みながら、ぼんやり考える。
25歳を手前にして、まわりの友人が何組も結婚した。
結婚は素敵だ。何より、結婚したいと思える相手と出会って、お互いを愛して、家族になるという関係が素敵だ。
急いではいないけど、私も近いうちに結婚したいなぁ…なんて。
大通りにでると、ここにも桜が。
日当たりによるけど、もう8分咲き。
私が生まれた日は、病室から満開の桜が見えていたそうだ。
人間が生きていくのに必要なものはなんだろう。
食べ物、睡眠、家……。医療的に必要なものはもちろんだけど、果たして生命維持のために必要なのはそれだけだろうか。
春の香りに心が踊る。
暖かくなって、新しい服に袖を通す。
春らしい、懐かしい曲を聴く。
それらだって、生きていくのに必要なもの。
だと思う。
電車に揺られて着いたのは大都会 銀座。
今日の目的は美容室。
担当してくれる彼はspoonで出会った。
3年前の冬、とあるキャストにコメントをくれた。
通勤中に聴いてます、と。
配信に力を入れていたあの頃、見ず知らずの人が自分の音楽で元気を貰っている、その事実に心があたたかくなった。
彼と話していくうちに、彼は美容師をしているんだと教えてくれた。いつか切ってあげるよ、と。
でも、当時spoonの人と会うことに前向きじゃなかった私は、きっと会うことは無いんだろうなぁと思っていた。
時は過ぎ、spoonの人と会うことが増えて、私はせっかくだから、1度でいいから彼に切ってもらおうと思った。
今だから言えるけど、初めてお店に行った時は店舗の大きさやキラキラした内装、都会のイケてる美容師さんたちに絶句して、すっっごく緊張した。
元々引きこもりがち。関東出身だけど、東京は怖い街だった。
初めて会った彼は、それまでの対応通り、とにかく優しくて、そして素晴らしい美容師さんだった。
(数年経ってアシスタントさんに「○○さんてどんな人ですか?」ときいたら、みんな口を揃えて「とにかく優しくて仏です」と返してきた。)
新しい私を作ってくれる、なにより可愛いを作れる彼も、創作家なんだなと思った。
そんな彼が、この春から別の地域にある店舗に異動することが決まった。
本人曰く、今後のキャリアを考えて、自分で志願したらしい。
私より歳上で、色んなことの先輩。
そんな彼の口から出てきた将来のこと。
私も将来について考えなきゃな、と思った。
別れ際、誕生日プレゼントを貰った。
「明日、誕生日でしょ」と。
ありがとう。とてもとても、ありがとう。
幸せな気持ちになった。
私は誕生日が大好きだ。
その人が1年、無事に生きてこれたから。
その人のこれから1年が、幸せ溢れる日になりますように。
うまれてきてくれてありがとうを伝えられる日。
生きてきてくれてありがとうを伝えられる日。
その人が、いつもよりちょっとワガママになっていい日。
お祝いされるのは嬉しいけど、お祝いすることも好き。
そして、両親に感謝を伝える日。
今年も無事この日を迎えられてよかった。
来年も一緒に迎えられたらいいな。
そんな願いを込めて、おめでとうを伝えられるなんて、とっても素敵。
私にとって今日までの「24歳」1年間は、変化の一年だった。
恋人と別れ、2年目に入った仕事で責任が増え、新しい仲間と出会い、たくさん創作して、そして、健康に生きたいと願っていたにも関わらず体調が悪くした一年。
無理しないと生きていけない日々だけど、何より健康じゃないと生きていけないんだって、当たり前だけど、全然分かってなかった。
健康って、体だけじゃない。心も健康じゃなきゃ、体も健康ではいられない。
だから、25歳の目標は「充実」。
仕事では、目標を立てて、スケジュール管理を上手くできるように。
プライベートでは、人と会って、よく笑って、美味しいものを食べて、たくさん音楽を聴く。
これから先の人生が面白く、より豊かなものになりますように。
25歳
どんな日々を過ごせるか。
それは、私次第。
頑張ろうね、私。
色んな出会いに胸を弾ませて、この手紙を締めよう。
次回
連載:25歳の私