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樹(tatsuki)

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#だから今シャッターを切った 其の弐

これから僕が綴るのは、僕の心の中の、何でもない日常の、ほんの1ページ。

カメラを趣味とする僕が、伝えられること。

“本当は、伝えなくても良いこと。”

“なぜ今シャッターを切ったのか”

読み終えたら、TwitterやInstagramで検索してみてください。

写真が載っています。

まず初めに。

1つめの記事を読んでくれた方、褒めてくれた方、そして今2つめの記事を開いてくれたあなた、ありがとう。

前回の記事をあげて、感じたこと。

約3000字。

長いと思っていた。

こんなに書けるのだろうかと、伝えたいことはあるのだろうかと、それでも駆け出すとあっという間にゴールテープを切っていた。

退屈だった数学の授業。

足が疲れた校長の話。

右から左へ聞き流した進路指導の面談。

長く感じていたのは僕らだけだったのだろう。

きっと先生達にはあっという間だったのだ。

伝えたい事があればあるほど、

時間がかかる。

手間もかかる。

費やしたそれらを、彼らは惜しんだだろうか。

逆も然り。

理由もなく好きだった書道の授業。

校舎裏の階段で過ごす昼休み。

あの子との帰り道。

一瞬だった。

一瞬だったのに、鮮明だ。

当時付き合っていた彼女は二つ年下。

ダンス部で、K-POPが好きで、真面目で、家族全員仲が良くて、いつも明るくて、弱音を吐かない、いつの間にか周りの人を、笑顔にして、明るい場所へ引っ張っていくような、向日葵のような子だった。

一方僕は、

バイトや遊びばかりで、遅刻も多く、気付けば留年、兄弟とも喧嘩が絶えず、口を開けば不平不満か夢物語、どうしようもなかった。

(今もさほど変わっていない事には触れないでほしい。)

しまいには、勝手に市外での一人暮らしを決めて就職。

彼女とはその辺りでお別れした。

共に過ごした3年間はあっという間で、でも確かに、温かかった。

彼女は僕の黒い部分を照らしてくれた、

自由さは僕の良さだと言った。

いつも明るく輝いて、眩しいほどだった。

向日葵だと思っていたそれは、太陽だった。

僕は、太陽にはなれません。

いつもキラキラ輝くような、

あなたの憧れにはなれません。

明るく元気にニコニコ笑って、

あなたの手を引くことはできません。

あなたを照らす光は他にあるでしょう。

僕は、樹でありたい。

眩い光に疲れた時、

突然の雨に降られた時、

陰となり、

傘となり、

ただそこに立っていたい。

“天下の人の与に蔭涼とならん”

小学校を卒業する時、恩師にもらった手紙。

その中で贈られた言葉。

一人一人、違う言葉が贈られていた。

あの時先生が惜しまなかった時間が、

僕の中に、確かに流れている。

あなたがホッと心を休めるひと時を、

文字で、言葉で、写真で、つくっていきたい。

ずっと心に残って、拠り所になるものをつくりたい。

いつか思い出して、またふらっと、立ち寄りたくなる場所をつくりたい。

知らぬ間にたどり着いたこのテトラルキア。

多くのクリエイターが記事をあげています。

僕も、きっと彼らも、まだ模索している。

1つ読んで気が済んでしまった人もいるだろう。

どうか今これを読んでいるあなたに

見ていてほしい。

僕と彼らの行く先を。

“ローマは1日にして成らず”

僕が連載を書き終え、

あなたが全て読み終える頃、

大切な何かが残るよう。

綴っていくよ。日常を。

さぁ、そろそろ散歩に出かけよう。

余韻に浸りに。

「 #だから今シャッターを切った 其の弐  」

待ちに待った季節がきた。

カメラを始めて11ヶ月。

目まぐるしく変わる景色の中で

いつもそれを求めていた。

半年ほど前に出会ったレンズ。

価格も安く状態も良かったので、

すぐに購入した。

300mmの単焦点。

所謂、望遠レンズ。

望遠の癖に単焦点、つまりズームができない。

要するに、近くのものは一切撮れないのだ。

遠くにある、ただ一点を狙うためだけにある。

こんなものそうそう使う機会はない。

いつかのためにと買った。

この季節を待ちわびていた。

3月某日。

夜にお酒を飲む予定があったので、

久しぶりに車を置いて、

自分の足で街へ繰り出した。

午前中に目を覚まして支度を始める。

シャワーを浴びたら顔の保湿。

鏡の前で乾燥に抗う26歳の必死の姿は、

できれば誰にも見られたくない。

だらしなく伸びた髪を、

くしゃくしゃと握りながら乾かす。

相変わらずの天パ。

何度こいつに悩まされたかわからない。

必死に丁寧に乾かしてやっても、

雨のたびに機嫌を損ねてそっぽ向く。

おかげで僕の機嫌も斜めに傾く。

ずっと戦ってきた。

長い付き合いだが、今ほど味方に感じた事はない。

うねって、良いのだから。

毛先を中心にジェルをつけたら、

またくしゃくしゃと握る。

うねった毛先がどこを向くかは運次第だが、

今はどこを向いても仕方がないと思える。

運なのだから上手くいかなくて当然。

なんとなく上手くきまった日は笑みが溢れる。

そのランダム性すら楽しめるようになった。

身支度が済んだらカバンにカメラを詰める。

濃紺の革のトートバッグに

フィルムカメラ1台

フィルムを4,5本。

その日撮りたい物や、天気によって使い分ける。

こんなに使わないのはわかってる。

ただ、ないと不安なのだ。

そしてレンズを2本。

標準と言われる、汎用性の高い50mmと、

ようやく出番の望遠、300mm。

気分を上げる、仕上げ。

自分で作った服を着る。

自分で作ったのだから、お気に入りに決まっている。

好きなデザインに身を包む。

デザインをちゃんとに見せたいがために、背筋が伸びる。

自分で自分を武装したような気持ちだ。

背筋を伸ばし、歩き方に気を遣い、僕は僕にかっこいいと言い聞かせる。

寿司屋の大将が鉢巻を巻くように、営業マンがネクタイを締めるように、アキラ100%が服を脱ぐように、僕は僕の作った服を着る。

最後に玄関で時計をして、指輪をして、

ハンドクリームを忘れたことに気がついて、

指輪を外す。

2回に1回はこの無駄な数秒を過ごしている。

しっかりと支度を済ませた日。

玄関のドアは、いつもより軽く感じる。

昼過ぎの電車に乗って横浜へ。

生憎、晴天とは言えないが雲はさほど厚くない。

外が明るければそれでいい。

太陽の光は、写真に温かみが出て、キラキラ光って素敵だけれど、今はそうじゃない世界も愛せるようになった。

時間があったので、横浜駅から桜木町、みなとみらいへと歩いて行く。

途中、歩道橋の上からそれを見つける。

待ってましたと言わんばかりに300mmのレンズに付け替える。

思わず、やや興奮気味にシャッターを切った。

てんで駄目。

“興奮気味”とはいかに取り繕った表現かがわかる。

興奮し過ぎて、ろくにピントも合っていない。

まぁたまには、こんなのをお見せするのも良いだろう。

きっとこの記事がなければ、どこにも出さなかった写真だろうから。

テンションが上がった時ほど失敗するのは、

昔から変わってない。

歩道橋を降りるとすぐ下に公園。

なんて名前だったかもわからないが、都会のビルに囲まれたその公園は、なんとも言えない異空間だった。

ビルに反射する空と雲。

少しの遊具と緑、砂埃は立たない土の広場。

平日の昼間に、ベンチで休むサラリーマン。

無邪気に駆け回る子供たち。

スキニージーンズに春色のジャケット、ヒールをコツコツと言わせ、ベビーカーを押すお母さん。

さすが横浜、と言ったところか。

転がったサッカーボールが僕の横を抜ける。

見上げるのに夢中で気が付かなかった。

今度は静かにゆっくりと、

またひとつシャッターを切った。

みなとみらいまで歩き、散歩を続ける。

何を目指すでもない。

ただ、春に釣られて進む。

コスモワールドという小さい遊園地の

裏側へ辿り着く。

ビルも、遊園地も、観覧車も、

もうとっくに見飽きている。

僕が生まれた横須賀には遊ぶ場所も特になく、

いつも横浜まで出向いた。

どこへ行ってもよく見る景色。

もう楽しいことなんてほとんどない。

これは以前撮った、夜のみなとみらい。

悪くは、ない。

けど、これと言って感じるものもない。

慣れてしまったのだ。

この街に。

この灯りに。

なのに、普段は見向きもしない、

存在にも気が付かなかったこの小さな通りに、

いつの間にか立っていた。

淡い光に導かれて、

春風の匂いに吸い寄せられて、

華やかな君に、心奪われて。

カメラを手にしなければ

出逢えなかった景色が沢山ある。

ここへ来なければ、

桜が咲いていなければ、

春が年に一度でなければ、

ここから見上げる事はなかったのだと思う。

桜は空を見せる花。

気持ちを上へ向かせるから

今は少しだけ立ったまま

ゆっくり回る鉄の塊に

時の流れすら感じるが

切り取ればそれは夢の中。

だから今、シャッターを切った。

最後の1枚は

#だから今シャッターを切った

で検索してみてください。

それではまた、残したい景色に出会うまで。


tetrarchia × Frame The Scenery キャンペーン情報 (4/25~5/8)

樹(tatsuki)が手掛ける完全オリジナルファッションブランド、Frame The Scenery。

今回、Frame The Sceneryの完全協力のもと、本記事を読んでくれた方限定の、特別キャンペーンを開催することとなりました。

Frame The Scenery公式ページ

応募者の中から抽選で、Frame The Sceneryで販売されているオリジナルステッカーをプレゼントします。

キャンペーン概要

  • 本記事下部のコメント欄から感想のコメントをくださった方の中から1名
  • tetrarchia公式ツイッターの「#だから今シャッターを切った其の二」公開通知ツイートを感想付きで引用RTしてくださった方から1名
  • tetrarchia公式インスタグラムの「#だから今シャッターを切った其の二」公開通知ポストに感想コメントを書いてくださった方の中から1名

計3名様に、Frame The Sceneryで販売されているオリジナルステッカーをプレゼントします。

応募期間は記事公開日(4/25)から5/8です。

注意事項
  • ステッカーの種類は選べません
  • 3つの応募方法全てから応募された場合でも、当選は最大1つとなります
  • 抽選後、当選者にはFrame The Sceneryより当選のご連絡、及び景品発送についてのご連絡を行います。本連絡をもって、当選者の発表とします
  • 商品の発送は、Frame The Sceneryより可及的速やかに行われます。なお、個人での発送となるため、発送タイミングに多少のズレ、また発送方法が予告なく変更となる可能性がございます。ご了承ください。
  • 当選者に送料および商品代金の負担はありません。やったね

皆様のご応募、お待ちしております


連載

コメント

  1. mel より:

    たきしゃんの想い、こだわり、感情。全てがすとんと素直に心に落ちてくるような文章だった。実は、一昨年くらいから説明文は読めても、物語やほかの文章は読むことが出来なかった。実際、今もとても困難。それでも、この文章はすんなりと読むことができた。とても心地よかった。ありがとう。希望が見えました。

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